元メガネ屋が語るメガネの裏話2
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こんにちは、imoです。

今回は前回からの続き物。

一般人が知らないであろう、勘違いしているであろうメガネのお話。

では早速行きましょう。

 

Contents

目のことは目医者が一番

はい、出た。

どの分野でもですが、「先生」と呼称のつくものは理屈を超えて信仰されがちです。

別にここでお医者さんをdisるつもりはないです。

一般ぴーぽーの方が盲目的に「先生」を信仰する人達がいることが問題。

眼に関して言えば、私の経験上このような人がいました。

パターン1

客 「医者に作ってもらったメガネが見えづらいんだけど、見てくれる?」

私 「わかりました。見てみましょう」

客 「そのメガネかけて歩くと転んじゃって怪我したんだよ」

私 「このメガネは老眼鏡なんで、掛けて歩いちゃダメです」

客 「医者はそんなこと言ってなかった。医者が間違っているっていうのか?」

私 「いや、そういうことではなく。用途として読書とか近くを見る専用のメガネなので、歩くことには適しません」

客 「うーん。いちいちメガネを出すのが面倒だから家で新聞読んだ後そのまま出かけたんだけど。これじゃ困る。やっぱりメガネは不便だね」

私 「お医者さんに事情を説明して新しく作り直したらどうですか?」

客 「いや、もうメガネはいいよ。あそこの先生は良い人なんだけど、メガネは不便だからもう使わない」

・・・・・

パターン2

客 「最近、新聞が見づらいんだよね。ちょっと見てよ」

私 「わかりました。・・・・目の調節力が落ちてきて近場を見る時辛くなってきていますね。メガネを検討してみてはどうですか?」

客 「先日も眼科の先生に目が良いって褒められたんだよ!まだまだメガネは必要ないですね。とも言われたんだ。何かの間違いだ!」

私 「それは恐らく遠くを見る視力の話だと思います。遠くは綺麗に見えているでしょう?」

客 「自慢の目だからな!若い頃からメガネなんてかけたことないよ。今もあそこまで見える」

私 「遠くを見る視力と新聞を見る時の見えづらさは別です。目が良い方ほどこうなりがちです」

客 「でも、医者はメガネはいらないって言っていた。」

私 「しかし、実際見えづらさを感じているんですよね?」

客 「そうなんだけど医者が・・・」

私 「一番大事なのは〜さんの実感です。不便を感じているのであれば改善する方法はあります。目が疲れたり肩が凝ったりしませんか?」

客 「うーん、確かに見づらいし最近は疲れて新聞も全部読まなくなった。でも医者が・・・もうちょっと様子を見てみるよ」

・・・・

こんな感じ。実際はもっと丁寧に話しますし、合間にレンズを体験させて見易さを実感してもらったりしますが、流れと結論はこんな感じ。

お医者さんが悪いとか間違っているとかではなくて、客の方が凝り固まって絶対的に信仰しているのです。「先生」という権威を前に自分の感覚や意見がなくなっています。

そして、往々にしてお医者さんは客の悩みの詳細の検討や生活におけるメガネの使い方、注意点、等々は客に説明しません。(そのしわ寄せがメガネ屋に来る 笑)

印象としては、

「遠くが見づらい!」と言われたから正確に遠くが見えるメガネ処方を出します!

「近くが見づらい!」と言われたから近くが正確に見えるメガネ処方を出します!という感じ。

客の言われたまんま解決策を出す感じ。

 

あと、お医者さんによっては、少し思想が偏っている人もいます。

例えば「メガネは極力使わない方が良い」「遠近のような累進レンズは不便で目に負担をかける」というような考えです。(遠近に関しては昔の歪みの大きいレンズの印象に引っ張られている人もいそうです。今はかなり改善されてます)

結構年配のお医者さんに多い印象なので、最近の若い人は違うかもしれません。

ここまでで何が言いたいかというと。お医者さんはメガネのプロではないということです。お医者さんは目の中を診ること。目の治療のプロであって、視力矯正の道具やそれに伴う悩み解決のプロではないということ。

対立するものではないはずですが、お客さんから見たらお医者さんの方が権威があり間違ったことを言わないと思われているので、何とも言い難いところ。

お医者さんの発言全てが正しいと思われることを考えると、お医者さんが本業の治療以外にもメガネという道具に精通していて、その道具の使用上の注意や将来想定されることまで見通して具体的なレンズの提案をすることが理想のように思います。

 

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処方度数には客観的に決まる唯一の正解はない

で、この流れで追加しますが、「”検眼”に関してメガネ屋とお医者さんでお医者の方が確実で正確である」とは決して言えません。

理由は、見え方は人それぞれ千差万別であり、これまでの見え方に引っ張られることと、使用する状況によって微妙に変わるからです。

 

検眼すると本当に人の眼は千差万別です。

見る力も千差万別。

人によっては、少しの度数入れで一気に1.5とかまで見える人もいれば、かなり度数を入れても0.8止まりという人がいたり、乱視を入れるとスッキリ見えて気持ちも悪くない人もいれば、スッキリ見えるようになるけど僅かでも乱視を入れると気持ち悪くなってかけていられないという人もいる。

そして、人間は慣れる生き物なので、”これまでの見え方”の影響を大きく受けます。今、両目で同じように見えている人には信じられませんが、右0.2、左1.2みたいなそれぞれの眼の視力が大きく違う状態で日々過ごしている人もいるのです。このような人はそれを基本に調整するのが良いでしょう。

上記の例のようにただ両目を同等に揃えることが正しいとは言えないことは多々あります。また、基準にする視力も1.0だと辛くなるのであえて0.8とかにする人もいます。一方で、タクシー運転手とか仕事上遠くを正確に見たい人は、眼には負担がありますが1.5まで見える度の強いメガネにしたりもします。

更に、人の眼は加齢によって変化していく。

かなり高齢(85歳超え)の場合、1.0はどうやっても見えない人も多いです。視力の限界が出てくる。

以上より、言ってしまえば「現在よりも楽に生活出来て少しでも見やすくなること」。これがお客さんにとっての正解であるとも言えます。客観的にこれが正解だ!と処方されて綺麗に見えても疲れたり、限定された状況でしか使えなかったりしたらそれは押し付けになってしまう。(これらのことに納得して作るならOK)

ということで、メガネの処方を出す場合に最重要なのはコミュニケーションであってそのベースに正確な検眼技術があるという感じ。

接客時間を長く取るということはこの点有益です。(治療を目的とするお医者さんがお客さんのメガネを作るために長くコミュニケーションを取るのは時間的にできるのでしょうかね?)

 

激安店はなぜ駄目か?

色々ありますが、「選択肢が少なく、御用聞きのスタッフしかいない」というのが一番大きいでしょうか。

前回書いた通り、激安店の選択肢はほとんどありません。知識のあるスタッフが、このお客さんにはもっと良い選択肢があるなーと感じてもお店の選択肢の中にはないこともあるでしょう。

そして、スタッフの知識や経験が少なすぎるのでここまで書いてきたような客の要望を汲み取れませんし提案も出来ません。多くのスタッフが話せることはフレームのデザインについてだけ。(お似合いですよー、今流行っていますよー的な)

やれることは、お客さんの言ったことをそのまんま実現すること。お客さんはメガネのプロではありません。希望する正確な使用要件を言っているのではなく、なんとなくの要望を言っているだけ。

だから、前回書いたような「近くが見えない」→「近くだけ見えて遠くは見えない」→「生活が困難」みたいな流れができます。

 

メガネ難民の懸念

激安店ばかりになって、高価格帯のメガネを扱っている店がなくなっていくと懸念されるのは、激安メガネがスタンダードになり、そこにしかアクセス出来なくなることです。

つまり、一般大衆はより高機能、高品質のメガネの存在を体験する機会がなくなるということです。

これは、一般大衆においてとても不幸な事態だと思います。

私が、前職の仕事していた時、人によって高価格帯のレンズじゃなければ使えない人がいました。どういうことか?というと、感覚が敏感な人で少しの歪みでフラフラして気持ち悪くなってしまうのです。歪みが強い安い累進レンズをその人が使いこなすことは不可能でした。

そんな人にとって、選択肢が激安メガネ店だけになってしまうとメガネをかけるという選択肢自体がなくなります。裸眼の見えない眼と一生付き合っていくしかない。激安店以外のより高レベルのレンズを扱うメガネ店があるということを知る機会がないとこの人は不幸な結果になります。

ここまでいかなくても、メガネは使いづらい疲れやすいと我慢して使っている人達も結構います。そんな人達も使ってみれば快適になるかもしれない選択肢を知らないことは不幸でしょう。私のお客さんにもこういう人は沢山いました。以前は激安店でメガネを買っていたけど、一度良いメガネをかけると快適でもう戻れないと話しています。

他の分野でもこういうことは多いのでしょうが、一般大衆は質の低いモノにしかアクセスできず、より良いもの、高品質なものには富裕層しかアクセス出来ないということになっていきます。

値段のみを判断基準にする人達を高品質なモノやサービスの提供者はターゲットとしていませんのでこれが自然な流れ。

メガネにおいては、日常生活を改善する可能性を秘めたアイテムでもあるので、その不快感、不便さからある程度解放されるのであれば高価格でも需要はあります。

高価格を無思慮に非難し、馬鹿みたいに「メガネは1万円以下!」「レンズ交換で5万は高過ぎ。バカにしてるのか?」とか宣う客が自分たちの首を絞めるのです。確実なことは人間は年齢を重ねると眼の機能も衰えていくこと。その時に、人によっては高機能、高品質のレンズが人生を変える可能性があります。

 

考えない人間の蔓延は全体にとっても害

投資においてもですが、何も考えず、目先のお金を取りに行く人間のせいで全体としても不利益を被るということは沢山ありますね。

メガネの場合の何も考えない人間は、激安メガネ屋、従来の個人店、顧客、等々そこに関わるすべての人達に言えることです。業界として「価格」のみに過度にフォーカスすると全体として選択肢がなく、単一のモノばかり氾濫してしまう。

価格のみじゃない選択肢は世の中に残しておいた方が益は大きいと思います。

メガネ業界においては、この意味でメガネスーパーには頑張ってもらいたい

まあ、他にもメガネの裏話的なことはあるのでまたそれは今度

それでは、また

 

 

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