[一気読み]年末年始に時間を忘れて読んだSF小説を紹介
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こんにちは、imoekatです。

本日は、私が年末年始に一気に読んだ「SF小説」のご紹介。

年末年始は移動時間も多く、読書には最適!

そして、普段「投資関連」や「ビジネス本」「自己啓発系」等々を読んでいらっしゃる意識高い方々!

少し毛色の違った小説もたまにはいいんじゃない?ということでご紹介(年末年始終わっちゃいましたけどね・・)

 

紹介する作品は、ファンタジー寄りのフワフワした作品ではなくその名の通りSF(サイエンス・フィクション)ゴリゴリのやつです。

つまり、妖精とか魔法とかあまりに突拍子のない設定はなく、現実からの延長でロジックを積み重ね、そこに作者の想像力を乗っけた「作品」に焦点を当てました

 

では、行きましょう。

 

1「ハーモニー」

 

今は亡き伊藤計劃の遺作です。

伊藤計劃って誰だよ!って方はこちらを参考に見てみてください。

→「Projiect itoh」「wiki

私は、伊藤計劃をメタルギアソリッドというゲームから知りました。

伊藤計劃が小説家として活動した期間はわずか2年ほどで正式な作品としては多分以下の三冊かと思います

虐殺器官」「ハーモニー」「メタルギアソリッド

期間も短いですし、作品数も少ない・・しかし、伊藤計劃は物凄いインパクトを世に残しました。

作風は、主に「死」を扱ったSFで、世界観は非常に緻密。

「現実を発展させていくと、こんな未来になりそうだよね」とリアルに思わせてくれます

処女作「虐殺器官」からその完成度の高さには驚かされました。

「虐殺器官」と「ハーモニー」はその世界が繋がっており興味があれば両方とも読んでみると、より世界観が深まるでしょう。

 

で、今回紹介するのは二作目の「ハーモニー」の方。

この小説の舞台は、「人間のあらゆるものを外部化しあらゆる不確定要素を排除した世界」です

人間は有史以来、自然(不確定要素)を支配する方向に発展してきました。

なぜなら、不確定要素が多い世界では、私たちはすぐに死んでしまう。

現実に私たちの生きる世界でも既にかなりの部分で人間は支配領域を広げていますよね?

そして、支配を拡大していく中で最後に残るのは何か?

それは、「人間そのもの」です。

「支配」=「コントロール」と考えれば、現在でも人間の能力の一定の部分は外部化され、だんだんと私たちのコントロールから離れていっている。

例えば、スマホの登場で私たちは「覚える」機能と「問題の解決策を考える」機能をどんどん奪われているように思います。(もはや電話番号なんて覚えてないし、電車の乗り換えに頭を悩ませることもない)

手軽に検索し何でも保存できる。いちいち頭を使う必要はありません。(メモ取るより写真に撮った方が早い。お店を探す時も3分で検索&評価を確認したり)

インターネットも部屋にいながらモノでも情報でも何でも調達でき、足を動かすなど具体的な私たちの行動力を奪っています。

 

更に、AI(人口知能)の発展で、私たちは生活する上でもっと考えなくなる可能性があります。

ビッグデータと個人情報から、AIに効率的で健康的な1日のスケジュールを設定され、栄養的に完璧な摂取すべき1日の食事も提案され、移動ルートも最も効率的なルートを提案される。

買い物も冷蔵庫の在庫から欠品を自動で注文、補充されたり、あらゆる生活に必要なものは全て自動で用意される。

IoTが現実的な今そんな世界は既にそこまで来ています。

昔、SF的な未来人を頭ばかり大きく手足が退化した人間として描いていましたが、現実は頭も退化しているかもしれませんね

 

「ハーモニー」では、更に進めて「生府」という概念が人間の体の中と外をコントロールしている世界です。

つまり、外部から人間の身体の中を常に見張っていて、病気などの異常をいち早く察知し自動ですぐに解決したり、「残虐な画像」や「危険思想」などメンタルに悪影響を及ぼす可能性のある事柄は徹底的に排除されます。

ハーモニーの世界で最も重要視されていることは「生命」であり「健康」です。

自分は社会に有用であり自身でさえ勝手に傷つけることは許されない世界。

押し付けがましい「優しさ」から強制的な「リソース意識」というものを植え付けられる世界

「酒」「タバコ」などの有害物質は身体に害であり摂取するなんてとんでもない!皆、デブでも痩せすぎでもなく健康的な体型

少しでも「危険」とされればあらゆる表現が糾弾される世界。

(現実でも最近いろいろ煩いですよね・・・なんでもかんでも文句をつけて「不快だ!」と主張する人たち・・そんな一部の声が拡大され影響力を持つことが多くなりました。)

 

 

そして、「人間」を隅々まで支配していくと最後に残るのは「意識」の部分。

ハーモニーという作品の大きなテーマはこの「人間の意識」です。

「意識とは何か?」「死とは何か?」

この問いを真正面から考えた作品。

ラストは、ユートピアでありディストピアでもあるなんとも言えない読後感です。

人によって受ける印象は違うでしょう。しかし、ガン闘病の中、真正面から「死」と「意識」に対峙した伊藤計劃のひねり出したこの物語のラストは必ず読んだ人に何か考えるきっかけを与えるはず。

 

 

私が初めてこの作品を読んだのは、確か8年くらい前ですが人工知能が大きく進化して来ているという今、改めて「意識」ってなんだ?と思い「ハーモニー」を再読しました。

人工知能は将来「意識」を持つのでしょうか?

持つとしたら、私たちの「意識」も再現可能ということになりますね。そうなると、生命とはなんでしょうかね?死とはなんでしょうかね?考え始めると眠れなくなります 笑

緻密でリアリティのある”有り得る未来”と「意識」や「死」に興味があれば、是非読んでみてください。

(人名は独特なので、読む人は初めにそこを乗り越えてください 笑)

 

・・・改めて伊藤計劃よ、もっともっとあなたの作品を読みたかったぞ・・残念です。

 

 

2「星を継ぐもの」

 

「ハーモニー」が有りうべき未来なら、こちらは有りうべき過去ですかね

1970年代の作品なんですが、今読んでもあまり古さを感じません

この「星を継ぐもの」はSFの世界では知らない人はいないレベルの有名作品だと思います。(なのでこの記事で多くは語りません。アマゾンレビューの方が情熱がこもった感想が書いてあります 笑)

内容は、「月で発見された異星人の遺体の謎を追う」というのが簡潔な説明。

「ハーモニー」もミステリー要素が有り謎を解いていく感覚がありましたが、主人公のトゥアンとミャアハの心理面にも大きなスポットライトが当たっており謎解きにそこまで重心は置いてなかったように思います。

一方、「星を継ぐもの」はもう純粋に謎解き&ロジック!登場人物の心理描写なんて申し訳程度です。

全編から作者のアイディア勝負!マニアックな知識を披露したい!という想いが伝わってきます。恐らく作者のジェイムス・P・ホーガンはオタクでしょう。

 

子供の頃に宇宙に神秘を感じたり、「宇宙人はいるのかな?」と夢想した人には絶対お勧め!

私は「月の謎」「ミッシングリンク」というキーワードに反応しました。

この作品は、「宇宙人」「月の謎」「テクノロジー」「人間の起源」「古代の地球環境の謎(恐竜って大きすぎて現代には生きられないんですよね)」など多くの子供達が抱いた疑問、関心をまとめて解決するアイディアを披露してくれます。

特に、ラストの解はとても論理的に結論へと導かれるので、ある種の気持ちよさを感じられるほどですよ。

 

自動的に続編へ

この作品も続き物で、この後「ガニメデの優しい巨人」「巨人たちの星」へと続きます。

実は、この「星を継ぐもの」では最後に一応の謎解きは提示されます。しかし、それは更なる大きな謎の始まり・・的終わり方をしますので、自動的に続編へ・・という流れに

私も案の定、「続きを早く!」と作者の罠にはまりました。笑

 

 

さて、紹介した2作品はそれぞれ「未来」「過去」と真逆の方向へ向けて論理的に推論を重ね、作者の極上の想像力でコーティングした作品です。

投資においても未来は読めませんし過去は変えられないのですが、「仮説を設定する」ことはとても重要です。

そして、その「仮説」は現実に立脚しそこから推論を重ねたものであるべきです。

現実を無視した適当な「想像」や「突拍子もない推論」は楽しいかもしれませんが、あまり意味がありません。

なんの根拠もない期待で「ギャンブル」することや、皆んなやっているという思考停止は現実世界で大きな害を及ぼす可能性もある。

 

小説を読んでいるとフィクションなんだけどとてもリアリティのある作品に出くわすことがあります。

そんな時、とても勉強になる。そして、作者に興味がわく。

小説家って仮説を事実と勘違いさせるプロですよね。そのためには現実に軸足がなきゃいけない。300ページもの長さを読者にリアリティを持ってもらって最後まで読み進めてもらうことは並大抵ではないと思います。

今後は小説もたまに紹介しようかな

楽しく小説を読んでいても学びはありますなーということで、また次回

 

 

 

 

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